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三菱九試単座戦闘機を作る! [1/72九試単戦]

木曽御嶽山の噴火も驚いたんですけど、何が驚いたって、ハセガワの「天龍」「龍田」が来年リニューアルされるということです。今年一番のサプライズです。
一度は作ってみたいと思っていた天龍型ですが、キットも古く資料も少ないため二の足を踏んでいました。艦船模型の制作ブログをやっている方で素晴らしいフルスクラッチの作例を作られた方がいらっしゃいますけど、そこまでする技術も根性もないVANにとっては朗報です。


さて、今回は三菱九試単座戦闘機を作ります。
艦船模型以外にもいろいろなキットを買っているのですが、船ばかり作っているとそういう他のキットがどんどん積みっぱなしになってしまうので、たまに消化してやらないといけません。艦船模型を期待された方はご容赦願います。

キットは「月刊モデルグラフィックス」2014年1月号の付録として付いていたファインモールド製1/72キットです。宮崎駿監督のアニメーション映画「風立ちぬ」(2013東宝)のテーマになった飛行機です。こういうおまけ商法に弱いVANはついふらふらと買ってしまいます。
同社から単品で出ている九試単戦のキットは1/48スケールなので、1/72スケールのインジェクションキットはこれだけになります。他にコロジーモデルの1/72レジンキットがあります。
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パーツ数は少なく簡単に組めそうです。多少バリが出ていますので、そこは丁寧に削ってやります。
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主なパーツを仮組みしてみます。パーツはほぼ隙間なくぴたりと会います。
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水平尾翼はランナーから切り離すと左右の判別が難しいのですが、間違って取付けるとぴたりと会わないようになっています。
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いままでプロペラ機は数えるほどしか作ったことがありません。このブログ第1作目のサボイアと前作のPS-1/US-2、あと小学4年生の頃に「隼」を無塗装で作ったことがあるくらいです。旧軍機に関しては素人同然ですし語るほどの蘊蓄も持ち合わせていないので、MG本誌の制作ガイドに従ってサクサク作っていきたいと思います。制作記事もあっさりしたものになると思います。


”母さん、僕は飛行機の設計家になります。”

”飛行機は美しい夢だとその方は言いました。僕は美しい飛行機を作りたい。”


コックピットと機体の組み立て [1/72九試単戦]

コックピット内部の塗装です。機内色は持ってないので、手元にあったXF-67NATOグリーンを使いました。ちょっと暗い仕上がりになってしまいました。ハイライトをドライブラシで表現しましたけどイマイチの出来。なにせドライブラシなんてやったのほんとに久しぶりなもので、加減がわからず苦労しました。
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シートベルトはプラストライプとエッチングのジャンクパーツ、0.2mm銅線などを使ってスクラッチしました。あらかじめ塗装前にシートに沿うようにクセを付けておきました。取付けるのに少し苦労しました。組み立て終わったとで和紙で作ることを思いつきました。
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細かな部分も塗り分けて組み立てます。組み立て後はほとんど見えなくなります…。
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コックピットを含め機体を組み立てます。
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翼端灯と尾灯は制作ガイドに従ってクリアのランナーから削り出しました。はじめてのトライでしたがまあまあの出来。大まかに削る際、接着したクリアパーツが外れないよう、力を入れすぎず慎重に削るのがコツだと思います。時間はかかります。
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"君は空中分解の原因が取付け金具だと思うか。"

"いいえ。問題はもっと深く、広く、遠くにあると思います。"

"今日、自分は深い感銘を受けました。目の前に果てしない道が開けたような気がします。"

機体の塗装 [1/72九試単戦]

九試単戦は機体の塗装に移ります。
当初は制作ガイドの通り「銀色」に塗装しようと考えていましたが、Wikipediaを見てみると、

「九試単戦では慣れない鋲打ち作業で出来た表面の刺子様の窪みをパテで埋めて灰緑色塗料を厚めに塗った後に磨きを掛けている。」(九六式艦上戦闘機 -Wikipedia)(強調部はVAN追加)

とあります。
んん!?これはどちらが正しいのでしょう?
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持ってる他の情報を集めて突き合わせてみます。
キットの付属したMG誌2014年1月号p.33の「銀色」指示の塗装図には、「このカラーリングは九試単座戦闘機の一号機が初飛行を果たした昭和10年時を再現したものです。」とあります。
一方、MG誌2009年11月号p.142の記事では、宮崎監督自ら調色した「灰緑色」のカラーチップをもとに、灰緑色のRC九試単戦が完成しています。
また、スケール違いのファインモールド製1/48「九試単座戦闘機」の塗装図では「灰緑色」の塗装指示が…。うむむ…。

これらの傍証から、実機は「灰緑色」で塗られていたものと思います。絵なので判然としませんが、アニメーション中の九試単戦は「灰緑色」ではなく「白っぽい光沢のある色(銀色?)」で表現されています。前述の通り、宮崎監督は九試単戦が灰緑色であることを把握していますので、おそらくは演出上の都合で色を変更したのではないかと考えます。MG誌2014年1月号の塗装指示はこのイメージを再現したもで、説明文は思い違いではないでしょうか。

今回は実際に塗られていた「灰緑色」で塗装してみたいと思います。塗装は缶スプレーを使って簡単に仕上げたいと思います。タミヤのAS-29灰緑色(日本海軍)を使用します。塗料の隠蔽力と発色を考えて、下地は白サフにします。
コックピット部のマスキングは制作ガイドだとティッシュを詰めるだけになっていますが、それだと中に吹き込みそうなので、一度コックピットの周囲を内側からマスキングしてからティッシュを詰めるようにしました。あまりきつく詰めると操縦桿が取れてしまうので注意です。
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そうするとマスキングが邪魔でフェアリングのヘッドレスト部にスプレーが回らない恐れがあるので、機体とフェアリングは別々にサフを吹きヘッドレスト部を塗装した状態で機体に取付けました。
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尾翼の赤色について、シャインレッドか普通のレッドか迷ったのでカラーチップを作って検討することにしました。上がH-23シャインレッド、下がX-7です。
最初は明るい赤のシャインレッドがいいかなと思っていたのですが、デカールの日の丸が暗い赤なので、かなり違和感が出ることがわかりました。結論として普通のレッドを使用することにしました。
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赤はフラットベースを少量加えて半光沢にしました。主翼端部の黒の塗装範囲は実機の画像から判断しました。機体の灰緑色はやや厚吹きになってしまいました。ヘッドレストの指定色は黒ですが、皮革感を出したかったので、焦げ茶色に塗っています。
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"この国はどうしてこう貧乏なんだろう。"

"貧乏な国が飛行機を持ちたがる。それで俺たちは飛行機を作れる。矛盾だ。"


エンジンの組み立て [1/72九試単戦]

エンジンの組み立てに移ります。
制作ガイドにあるように0.1mm銅線でディティールアップしてみました。しかしよく見直してみると銅線が前に飛び出しすぎなので、これは全部外してやり直しました。
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銅線をやり直した後、塗装してエナメルのシルバーでドライブラシをかけました。細かく塗り分けてみましたが、組み立て後はほとんど見えません。
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プロペラはそのまま組み立てると、羽の回り方がやや渋いようなので、シャフトの後部を約1mmカット、ポリキャップを半分にカット、先にプロペラを減速機カバーのパーツに取付けてから、エンジン本体に取付けました。
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エンジンカウルはラッカーの黒をエアブラシを使って塗装しました。失敗して塗装面が荒れてしまったので、やや厚く塗装した後、コンパウンド(荒目、仕上げ)を使って磨きだしています。
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"創造的人生の持ち時間は10年だ。芸術家も設計家も同じだ。"

"君の10年を力を尽くして生きなさい。"


機体の墨入れと仕上げ [1/72九試単戦]

ランディングギア、水平尾翼を取付けて機体全体に墨入れをします。
墨入れはエナメル塗料を使用します。灰緑色部にはXF-11暗緑色とXF-53ニュートラルグレイを混ぜたものを、日の丸、赤色部にはXF-64レッドブラウンを使用しました。
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サーフェイサーと塗装が厚塗りになってしまったせいか塗料がモールドに残りにくく、拭き取りの加減に苦労しました。なんとかできましたがリアルというより小汚い感じに…。
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風防は逆光で透けるのが嫌だったので、マスキングの後シルバー、黒サフ、シルバーの順に3回スプレーを吹いてます。
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機体を乗せるベースを作ります。プラ材で車輪止めを作りました。
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ベースをXF-60ダークイエローで塗装した後、黄緑のカラーサンドをまぶしました。接着は水で溶いた木工用ボンドを使っています。カラーサンドの剥離防止と光沢を抑えるため全面にH20フラットクリアーを吹きました。
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次回で最終回です。


"僕らのエンジンは非力だ。軽く丈夫な機体を作るのが僕らの仕事だ。"

"削れるだけ削り、表面を滑らかにして空気抵抗を減らす。"

"スッカラカンの、フルメタルの、世界中どこにもない飛行機が僕らの飛行機だ。"


風立ちぬ、いざ生きめやも。 [1/72九試単戦]

最終回です。最後にエンジンと細かいパーツを取付けて完成です!

1/72 大日本帝国海軍 三菱 九試単座戦闘機 一号機
1/72 IJN Mitsubishi Ka-14 1st Prototype
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キットについて
多少バリは出ていますが、パーツの合いは良好です。ただ、主翼上面パーツと機体との分割部に大きい隙間が出来やすいので、ここの擦り合わせは十分に行った方がいいと思います。

反省点
塗装の手法など、艦船模型とはまた違った部分に気をつけて制作しました。久々のエアモデルで脳の違う部部分を使った感じでとても新鮮でした。
製作中にも書きましたが、サーフェイサーと機体色の塗膜が厚くなってしまい、モールドが浅くなってしまいました。サーフェイサーを使用したのは上に吹く塗料の隠蔽力と塗装の「乗り」を考えてのことでしたが、今回は使用しなくても良かったかもしれません。機体色も缶スプレーを使わずエアブラシを使えばもっと塗膜を薄くできるでしょう。

堀辰雄「風立ちぬ」について
山あいのサナトリウムを舞台にした、主人公と不治の病に冒された恋人との短編小説です。物語は1934年の夏に始まり1936年の冬に終わります。同じ時代の中に生きたということ以外は、この物語と堀越二郎との間には何の関係もありません。
本作は既に著作権保護期間が満了しており、青空文庫で無料で読むことができます。

アニメーション「風立ちぬ」について
九試単戦を設計し、後に零戦を設計することになる堀越二郎の物語です。堀辰雄「風立ちぬ」のイメージがストーリーの各所にちりばめられています。いささか唐突に終わる感じのするラストシーンも、前述の堀辰雄の影響ではないかと思います。
「創造的人生の持ち時間は10年」という言葉が劇中に登場します。宮崎駿の10年がどこであったかを考えた時、VANは、彼が1963年に東映動画(現東映アニメーション)に入社してからの10年ではないかと思うのです。
新人であるにもかかわらず、「太陽の王子ホルスの大冒険」(1968東映)や「どうぶつ宝島」(1971東映)などで作品に斬新なアイデアを注ぎ込み、他のスタッフを驚かせます。この時作られたプロットやシチュエーションはのちの彼の作品の中に度々登場します。こうした姿が劇中の堀越二郎の姿と重なります。
アニメーション「風立ちぬ」は堀辰雄と堀越二郎そして宮崎駿の物語なのだとVANは思うのです。



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美しい機体だと思います。
単一の目的のために作られ、あらゆる無駄を削ぎ落としたシンプルなデザインは美しい。
このあとに続く、九六式艦上戦闘機、零式艦上戦闘機と堀越二郎の系譜を追っていくのもいいですね。すぐではないですが、そのうち作ってみたいテーマです。

九試単座戦闘機を作る ー完ー
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