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天蓋の設置 [1/700病院船氷川丸]

前回からの続きです。
第一番艙と第二番艙の明度の違いをどう解釈するかについて、もう一度資料を精査してみます。

資料本「氷川丸とその時代」には、1943年(昭和18年)5月20日、横浜三菱造船所入渠の際、次の工事を行っている、とあります。

「第六番艙に屋根を張り、白色塗装のうえ、上部に赤十字標識を描く。」

第六番艙の上部に屋根を張ったのは、赤十字標識のためだけでしょうか。
「氷川丸」は病院船に改装される際、船艙の一部を病室および兵員室に改装しています。資料本によれば、

「第六番艙中甲板を第五病室(伝染病室)、第二番艙中甲板は兵員室とした」

とあります。

船艙は本来居室として使用することを想定してないので、改装の際、それぞれ仮設の電気通風装置を設置していますが、それだけでは快適とは言い難い環境だったのではないかと考えます。
晴れの洋上、とりわけ南洋ともなれば強い日差しが甲板や船体に照りつけ、船室内の気温も上がります。夜になると外気温は下がりますが、熱を持った船体や甲板はすぐに冷えることはなく、放熱して船室内の気温はなかなか下がりません。もとより「氷川丸」には、甲板の温度上昇を防ぐため、直射日光をさえぎる天幕が備わってますが、キャンバスでは強風等気象条件によっては展張できない場合もあります。そのため、居室として環境の悪い第六番艙上部には固定天蓋が必要だったのではないか、そして記録にはないが、兵員室として使われた第二番艙上部にも同様の措置が取られたのではないか、とVANは考えました。

ということで、第二番艙上部にも、第六番艙同様の固定天蓋を作ります。映画のキャプチャーの解像度が低く自信がないのですが、赤十字があるような気がしたので、これも描きました。
DSCN3572.jpg

船橋正面のデリックブームを取り付け。
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固定天蓋を取り付け、左舷側に天蓋支柱を取り付け…たのですが…
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考え直して、デリックブームの格納位置を変更。なんだかんだで3回ぐらいレイアウトを見直しました。
画像などで確認すると、船橋前のデリックにはワイヤーが通っておらず、使用できないようになっていたようです。
DSCN3583.jpg


天蓋支柱にキャンバスを張ります。
キャンバスの素材は、生成色(きなりいろ、漂白してない)習字用半紙をそのまま使用しました。
現物に合わせ半紙をカットして、接着は水で薄めた木工用ボンドを面相筆で塗り。障子紙を張る要領で張っていきます。
DSCN3605.jpg

第二番艙上部の天蓋を左舷側のみ。キャプチャー画像からそう判断したのですが、もしかしたら右舷側にも天蓋支柱が設置されてたのかもしれません。それともキャンバスの範囲は下の兵員室のレイアウトに依存するのかもしれません。
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第六番艙廻りにも設置。多少ヨレヨレっとした方がキャンバスらしい感じがします。
複雑な部分は幾つかに分割して張ってます。
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この仮設天蓋に描かれた2つの赤十字が、最終的に船橋正面の赤十字とアフトボートデッキ上部の赤十字電飾に変遷していったのではないかと根拠なく思います。

ウェザリングと張り線 [1/700病院船氷川丸]

お待たせしました。「氷川丸」の製作を再開します。というかもうすでに最終局面です!

デリックブームはキットパーツを使わずに、0.5mm及び0.8mm径プラ丸棒を使います。ヤスリで両端にテーパーをつけました。
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マストやデリックポストに付く滑車はライオンロアのエッチングパーツ、0.6mm丸ボルトヘッドに0.1mm銅線を接着したものを使いました。
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デリックブームを取り付けます。
上空から撮影された氷川丸の映像を見ると、第二番艙のデリックブームは、航行中にもかかわらず、ブームを起こした状態です。本来であれば、航行中は船橋正面にあるブーム受けに乗せた状態が普通だと思うのですが、やはり仮設の天蓋上に描かれた赤十字を見せるためにブームを起こしていたのではないかと思います。
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第六番艙上部もうまくデリックブームを配置しないと見えにくいです。
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すかり忘れていた舵。プラ材等でスクラッチしました。
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船体をエナメル塗料でウェザリングします。舷側部をウォッシングして、喫水線に近い排水口から排水の跡がかなり目立っていたので、面相筆で描き込みました。
DSCN3678.jpg

今回は張り線をがんばります。メタルリギング0.06号(0.047mm)を使ってみます。
髪の毛より細い金属線で、本来は鮎釣り用のラインに使用するものだそうですが、直線性があり、模型用の張り線に向いているということなので買ってみました。
ところが、実際使ってみると、結構「巻きぐせ」が付いていてそれほど直線性はありません。
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爪でしごいたらまっすぐになるかな?と試しにやってみたら、くるくるとカールしてしまいました。
これより太い径のメタルリギングはこんなことはないのかな?
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金属線ですので、カットした後の切れ端の処理はしっかりやった方がいいと思います。
皮膚に刺さるだけならまだいいですが、目に入ったりするとたいへん危険ですので、粘着テープ等を使ってできるだけ回収するようにしましょう。(ペットや小さなお子さんのいる家は特に注意。)
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メタルリギングでは、長い距離をピンと張るのは難しく、結局デリックのワイヤー部分のみに使用しました。実際の映像を見ると、使用していないデリックのワイヤーは外されているようです。第二、五、六番艙のデリックのワイヤーは張らないことにしました。
残りの長い距離の張り線は黒の伸ばしランナーを使用しました。伸ばしランナーは優秀です。たるんだ状態で取り付けて、熱したドライバーや半田ごてを慎重に近づけると、熱で収縮してピンと張ります。ただ、均等な径の伸ばしランナーを作るのが大変なことと、逆光で透けてしまうのが欠点です。
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次回最終回です。

戦争の時代を超えて [1/700病院船氷川丸]

最終回です。「氷川丸」は船尾に日章旗を掲げて完成です!

大日本帝國海軍 病院船「氷川丸」(昭和18年)
IJN Hospital ship HIKAWA MARU (1943)
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「千鳥型」水雷艇と。
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出典:映画「海軍病院船」
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出典:映画「海軍病院船」

映画「海軍病院船」の中で、「駆逐艦」より傷病兵と遺骨を引き取る、とナレーションのついたシーンがありますが、これは「千鳥型」水雷艇ですね。
よく見ると「氷川丸」煙突後部の電飾赤十字標識がないので、このシーンは1943年5月の入渠以前に撮影されたものと思われます。


反映できなかった点
第二番艙のレイアウトが全体的に船首寄りです。2~3mm程度船尾側にずらすと実物に近くなります。
DSCN2908.jpg

船橋天蓋の塗装ですが、よく見てみると一部が白っぽくなっています。
0018.jpg
出典:映画「海軍病院船」

下画像の青線で囲まれた部分が白で塗装されていたようです。
DSCN3771.jpg

左舷舷側後部に仮設の排水樋を再現したのですが、そのさらに船尾側にやや太めの排水樋があるようです。(矢印部)仮設の洗い場があったのかもしれません。
0123.jpg
出典:映画「海軍病院船」

反省点
・最終時仕様の病院船「氷川丸」はネット上で見かけますが、戦中期の仕様については無いようでしたので今回作ってみました。
・商船の模型は初めてだったとはいえ、完成までとにかく時間がかかってしまいました。今までで最長です。
・今回初めて木甲板をマスキングで塗り分けてみました。模型雑誌などでもよく紹介されている手法です。たしかに手間をかけた分だけ見栄えもいいのですが、そこまでやる価値があるかどうか多少疑問に感じます。



日米をつなぐ貨客船として誕生し、戦中は病院船、戦後は復員船を務め、そして再び貨客船として生涯を終えた「氷川丸」には様々なエピソードがありますが、その中でも一番好きなエピソードを最後に紹介して終わります。

” 終戦直前の昭和20年7月、舞鶴の軍港で「氷川丸」が駆逐艦「響」に重油を補給した際、 艦長以下士官全員を船上に招待したことがあった。その中に学徒出陣の宮岡海軍少尉が居た。熱い湯の溢れる風呂に入れてもらい、食堂に行くと、白いテーブルクロスの上にフルコースの洋食の用意が整えてあった。戦後東大に復学し、郵船に補欠で入社した宮岡が平社員の頃に、「氷川丸」は引退したが、その30年後社長となった宮岡に、社内の反対を抑えてクルーズ船による客船事業の復活を決断させたのは、この時の「氷川丸」の印象深い思い出であったらしいとの逸話が、阿川弘之の随筆「七十の手習ひ」に載っている。”

竹野弘之「氷川丸の生涯」
一般財団法人 山縣記念財団 機関誌「海事交通研究」第59集(2007年11月発行)

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病院船「氷川丸」を作る  ー 完 ー


次回、一回雑記を挟みます。今後の展開についてです。そのあと次の製作に入ります。






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