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雪風の識別塗装 [1/700雪風(就役時)]

あらかじめお断りしておきますが、今回の考証は本ブログ管理人の拙い考察のもとに行われたものであって事実と異なる可能性が十分にあります。 ブログ読者がこの考証を利用する事は自由ですが、それにより利用者が不利益を被ったり、思わぬ赤っ恥をかいたとしても当方はいっさい関知しませんので悪しからずご了承ください。

さて、今回の雪風で一番こだわりたい部分の話です。

雪風の写真で有名な物は2枚あります。1939年(昭和14年)12月と1940年(昭和15年)
1月に撮られた物です。この2枚はいずれも佐世保沖での公試中の写真で、雪風が竣工した
1940年(昭和15年)1月20日以前に撮影されたものです。

厳密に言えば公試中の艦の所掌はまだ造船所(海軍工廠)側にあり、軍務に就いている
状態ではありません。
舷側の「ゼカキユ」(右から左に読む)と艦尾の「ぜかきゆ」(右から左に読む)の表示は
進水式のとき与えられますが、艦首の駆逐隊番号と煙突の識別帯が竣工引き渡しを
受けた時、またはその前後に書き込まれるはずです。

巷で見る多くの作例は上記2枚の写真を参考にしているためか艦名のみ書かれたものと
なっていますが、雪風もまた竣工時には駆逐隊番号と識別帯が書き込まれていたのでは
ないでしょうか。

そう思う理由が2つあります。
1)雪風が竣工する1ヶ月前の1939年(昭和14年)12月20日に竣工した
  陽炎型駆逐艦不知火には駆逐隊番号と識別帯の塗装がある。
2)1940年(昭和15年)11月30日に竣工した陽炎型駆逐艦磯風にも駆逐隊番号と
  識別帯の塗装がある。

これら2つの艦の間に挟まれた雪風にも必ずあるはずです。
ただ写真が残ってないだけなのではないでしょうか。

「竣工時と銘打って作るならきちんと就役している姿を作りたい!!」

ということで今回の雪風には艦名に加えて駆逐隊番号と煙突の識別帯を
付けてみようと思います。

雪風は竣工後、第2艦隊第2水雷戦隊隷下の第16駆逐隊所属になります。
つまり艦首の駆逐隊番号は「16」です。

と、ここまでは簡単です。問題は煙突の識別帯です。
何本の線が入っていて、それは前部煙突に描かれていたのでしょうか。
それとも後部煙突に描かれていたのでしょうか。

月刊モデルアート別冊 艦船模型スペシャル No.30《特集》日本海軍駆逐艦の系譜・3
P.63に日米開戦直前に識別塗装は消されてしまったが、現場の混乱から昭和17年初頭に
識別線が復活したとあり、そのときの仕様が書かれています。
これがヒントになりそうです。

それによると、水雷戦隊内駆逐隊の序列に従い、1番隊は細線1本、2番隊が2本、3番隊が
3本、4番隊が太線1本に細線1本となっている、と書かれています。
また、艦隊内に水雷戦隊が2隊ある場合は艦隊内の序列に従い、1番水雷戦隊は前部の煙突に
2番水雷戦隊は後部の煙突に識別帯を入れた。とあります。

これを雪風竣工時の水雷戦隊の編成に当てはめてみます。
光人社刊「図解 日本の駆逐艦」巻末の水雷戦隊編成表によれば
1940年(昭和15年)1月末ごろの水雷戦隊の編成は以下の通りです。
第1艦隊
 第1水雷戦隊:第2駆逐隊、第24駆逐隊、第27駆逐隊

第2艦隊
 第2水雷戦隊:第8駆逐隊、第16駆逐隊、第18駆逐隊
 第4水雷戦隊:第6駆逐隊、第7駆逐隊

ここで雪風と竣工日が近い駆逐艦不知火の画像を見てみます。
不知火は前述のとおり、識別帯を巻いた1939年(昭和14年)12月20日撮影の
写真が残っており、これによると第18駆逐隊に所属し、後部煙突に細線が2本入っています。

この間第2水雷戦隊の編成は変わってませんので、1940年(昭和15年)1月末の時点で
1)第2水雷戦隊の艦隊内席次は2番である。
2)第18駆逐隊の水雷戦隊内の席次は2番である。
という推測が成り立ちます。

このことから、雪風の識別帯は後部煙突に描かれていたと思われます。
それでは雪風の所属する第16駆逐隊の水雷戦隊内での席次は何番だったのでしょうか。
少なくとも番号の若い順から席次が決まっているわけではなさそうです。

VANは水雷戦隊内で編成の古い順ではないかと推測します。
(追記)この部分について、下記コメント欄にて出沼ひさし様より、駆逐隊の序列は駆逐隊司令の先任順であることが多い、との助言をいただきました。したがって本推測は誤りとなります。詳細は下記コメント欄を参照ください。(追記終わり) 2009/09/07

編成表によれば、1939年(昭和14年)11月15日に第8駆逐隊、第18駆逐隊が編成され
翌1940年(昭和15年)1月27日に第16駆逐隊が編成されます。
不知火の画像から第18駆逐隊は2番隊である事がわかっていますので
この推測に当てはめると

第2艦隊
 第2水雷戦隊:第8駆逐隊(1)、第18駆逐隊(2)、第16駆逐隊(3)

(注)カッコ内は駆逐隊席次

と推測され、よって第16駆逐隊は3番隊であり、
「雪風は後部煙突に細線3本を描いていた」と推測されます。

(追記)光人社刊 雑誌「丸」編集部編 「ハンディ版 日本海軍艦艇写真集 17 駆逐艦 初春型・白露型・朝潮型・陽炎型・夕雲型・島風」p72右上の写真に、第2煙突に3本の白線を巻いた雪風が写っているのを見つけました。キャプションより、昭和15年4月2日基隆で撮影されたものであることから、出沼ひさし様の検証のとおりであることを確認しました。(追記終わり)2009/12/29

同じ検証を画像の残っている駆逐艦磯風にも試してみましたが、こちらの方はうまく
いきませんでした。この頃の駆逐隊の編制は改廃が激しく、おそらくは改編によって
空いた席次に新たに編入された駆逐隊が当てはめられたのではないかと思われます。
ちなみに磯風の写真は1941年(昭和16年)10月20日に撮影されたものであり
第1水雷戦隊第17駆逐隊に所属し、前部煙突に細線2本が描かれています。

よって、ここまで検証してきた事項は確証を得るに至らず、推測の域を出ません。

ここまで検証しておいて何とも頼りない結果ですが、この推測を信じて
塗装をする事にします。まー、恥かくの自分だしね…。

マスキングにするかデカールにするか悩みましたが、どちらもうまくいきそうにないので
筆塗りする事にしました。こんな感じです。
DSC01321.JPG

舷側艦尾の艦名と駆逐隊番号は最後にデカールを張ります。

長々おつき合い頂きありがとうございました。

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コメント 3

出沼ひさし

はじめまして。
私は海軍の編制に興味を持っている者です。

「雪風」竣工時の識別線ですが、結論から言いますと記入はされておりません。なぜなら「黒潮」とともに第16駆逐隊を編成したのが昭和15年1月27日であり、それまでは呉鎮守府部隊だったからです。

それと駆逐隊の序列ですが、駆逐隊司令の先任順であることが多いです。
ちなみに昭和15年度の第2水雷戦隊は
一番隊:8dg(朝潮、大潮、満潮、荒潮)、司令伊集院松治大佐43期
二番隊:18dg(霞、霰、陽炎、不知火)、司令左藤寅治郎大佐43期
三番隊:16dg(初風、雪風、黒潮)、司令島崎利雄大佐44期(昭和15年1月27日発令)
です。
ということで1月27日以降のモデルとするならば、識別線は正しいことの成ります。
by 出沼ひさし (2009-09-07 00:20) 

VAN

出沼様、はじめまして。いらっしゃいませ。

大変重要な情報をご教示頂きありがとうございます。

改めて自分のブログを読み返してみると、思うにまかせて書き連ねていくうちに「竣工日」と「就役日」がごっちゃになっていますね。お恥ずかしい限りです。

ご指摘の通り、雪風の竣工日は昭和15年1月20日で、第16駆逐隊の編成は1月27日です。私の作りたかったのは、第16駆逐隊として編入された雪風の姿だったので、現在ブログのカテゴリーにしている「1/700雪風(竣工時)」では間違いになってしまいますね。
ここは後から読む人にも誤解を与えないように改めて「1/700雪風(就役時)」にしたいと思います。

>それと駆逐隊の序列ですが、駆逐隊司令の先任順であることが多いです。

この基準は全く知りませんでした。新たな知識に触れることができて、とても嬉しく、また有り難く思います。
自分なりの推論を立て、アプローチ試みてみましたが、これは全くの的外れでした。偶然にも結果は一致しましたが。
この部分についてはブログ本文内にて、順次、追記訂正させて頂きます。

私がこうしてブログを立ち上げ、駄文を書き連ねているのも、賢明なる先輩諸氏からこのような助言を頂けるのではないか、との思いがあったからです。

つまらないブログではありますが、今後ともおつき合い頂ければ有り難く思います。


by VAN (2009-09-07 20:48) 

出沼ひさし

いえいえ、こちらこそ。

実は戦時中の識別線を調査中なのですが、不明点が多く苦戦中です。
写真も少ないし、私は海軍の人事に疎いものですから。

最後の文ですが下記のように訂正します。
識別線は正しいことの成ります。→識別線は正しいことになります。

失礼しました。
by 出沼ひさし (2009-09-08 04:08) 

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